詩「暑中お見舞い」
遥かな山峰に抱かれて
青い空には雲ひとつなく
町並み陽炎のなか
そこかしこから
子供たちの歓声が上がる
黒い屋根瓦はじりじり焦げて
耳を澄ませば
打ち水の音
低い石畳の階段に
カランコロンと下駄が鳴る
チリンチリンとゆれる風鈴
庇の下で
ステテコ姿のお爺さんと
黄色い通学帽の子供が
ふたり仲よく
縁側に座ってる
スイカをふた切れ盆にのせ
額の汗を拭きながら
いそいそ母が運んでくれる
奥の部屋では
連休続きの父親が
寝ころがってテレビの野球観戦
背中には渦巻きの蚊取り線香
思わず猫がくしゃみする
そこは暑気が逃げた城下町
それでも夏は終らない
大空をくるりと
のほほんと
一羽の燕が円を描く