詩「線路の追憶」

少年時代から懐かしい一本の線路
どこか錆びて苦い味
歩いてみれば大人になれる

意味不明な向上心と
惰弱な筋力
それだけで終着駅があるという憧れ

小さく呼びかける愛がいる
線路の傍らに咲く優しい花の微笑み
躊躇する僕に列車は走ってくるだろうか

蕾を取って蜜を吸ってみる
懐かしい想い出の味
自己中心なモラトリアム
悩んでいる僕に列車は走ってくるだろうか

黒い蟻が葉の上を動いている
蟻だって道はない
全身で運命を繰り出している
それでも僕の列車は走ってくるだろうか

楕円な葉が螺旋を描く
でも手を伸ばして茎を握り
曲げればザクリと折れるのだろう
その残忍性に僕は違和感を持たない
けれど僕の列車は走ってくるのだろうか

根は大地に広がっていく
大地を覆い
地球を包み込む
その上で僕は屈み込んで
自分の小ささを考えてみる

僕の列車は走ってくるだろうか
待っている僕の列車は走ってくるだろうか