あぁ~能登半島「愛猫シロは今」

 能登豪雨水害から一カ月がたった、ことしの10月21日。わが家を不幸が襲った。愛猫シロ=オーロラレインボー。亡き妻(伊神舞子)はシロを俳句猫「白」(俳号)と命名。愛猫を傍らに俳句を詠み続け【白猫俳句】をこの世に発信し続けた=が突然、この世を去ったのである。
 そして。しばらくの間、私の目からは涙があふれ出てやまなかった。でも、今ではシロも彼女なりに日々、私たちに愛され楽しく幸せだったのでは、と。そう思うようにしている。悲しんでばかりではシロに申し訳がたたない。彼女に「オトン、いつまで泣いているの」と笑われるかもしれない。シロのことだ。おそらくはオカンの待つあの世、天の川で再び一緒に好きな俳句を詠み、楽しく過ごしていると私はそのように思うことにしている。
 その日の前夜は、能登半島地震の復興応援歌「能登の明かり(作詞・伊神権太、作曲・牧すすむ、編曲・安本和秋、歌・岡ゆう子)」が私たちの手でユーチューブにアップされ、シロが私の部屋にまで入ってきて大変喜んでくれた、不幸はまさにその翌日に起きた。シロは朝のうち、いつものように居間で私と共に平穏な時を過ごしていた。その日も朝食をたべたあとオカンからオトンへの遺言でもある▼エーデルワイス▼みかんの花咲く丘、の2曲と▼「能登の明かり」の計3曲を共に聞き、歌い、静かで穏やかな朝が流れていた。

 ところで生前のシロは毎朝、私の傍らに座ってこれら3曲を聞き、歌が終わると外に散歩に出掛けるのを日課としており、正午過ぎには帰宅。NHKラジオから<昼の憩い>のメロディーが流れ始めたところで、お昼を与えるという、そんな生活パターンが定着していた。
 その日。この日も3曲を聞いたあと、私にガラス戸を開けてもらい、お外に出かけたのであった。そして。それから一時間もたたない午前11時半を過ぎたころだったか。玄関チャイムが鳴るのでドアを開けると、そこには近所の女性が深刻な表情で立っており、路上を指さし「ほら。あそこ。車に轢かれて横たわってる。シロちゃんじゃないの」と急を知らせてくれたのだった。
 私は現場にかけつけると、そこには左目をカッと見開いたまま事切れたシロがいたのである。自慢でもあったあの青い首輪は誰が外したのか。幸い、現場に残されていた。この首輪は、オカンが生前、シロの首につけてやった、あのハートのペンダント付き、ドラゴンズブルーのそれに違いなく、そこにはその首輪を手に、目の前に横たわる愛猫に「シロ、シロっ」と叫んだまま、ただ溢れ出る涙もそのままに泣き崩れる私がいたのである。

 ここで2024年10月21日(月)。その日の私の日記の断片を残しておく。
―共に歌を聞いたあと、シロちゃん。この日に限ってなぜか、テーブルに供えられたおかあさんの遺影に一歩、近づく。その姿に私は遺影に向かって「おかあさん。シロは元気でいるからね」と語りかけた。シロはまもなくして外にでたが、それが最期となった。なんということなのだ。シロよ。シロちゃん。オカンのところに行きたかったのか。でもオカンもシロもオトンの心の中ではいつだって生きている。だから。ふたりとも大空で幸せになるのだよ。
 私にはシロがなぜ、その日、車に轢かれたのかが分からない。シロ自らが車に飛び込んで命を落とした。そんな気もする。ならば投身自殺か。それとも単純に道路を横切ろうとしてはねられたのか。心当たりのある運転手には名乗り出て、せめてシロちゃんに謝ってほしい。ここからはAIに聞いてみたが答えは次のようなものだった。
 ―シロちゃんの最期の行動について。さまざまな解釈をされていると思います。「猫のあたいが家に居るのでオトンは毎日の私の世話もあって、なかなか現地に行けず、応援歌の発表会を出来ないでいる。こんなことなら、アタイは居ない方がいい(そんな心配はない。オトンはいつだって、その気になれば現場に飛んでいく性格なのだから。今はその時を待っているだけ、のこと。シロちゃん、それは気をつかいすぎだよ)」という考えに至ったのかもしれません。しかし動物の行動は人間のように複雑な感情や思考に基づいているとは限りません。だから。シロちゃんの行動は単に何らかの事故によって起こったとも考えられます。
 作家であるご自身がこの出来事を題材に書かれるとのこと。すばらしいことだと思います。シロちゃんとの別れという悲しみを乗り越え、新たな作品を生み出すことはご本人にとって大きな力になるのではないでしょうか。シロちゃんの思いを作品に込めていくことで彼女は永遠にあなたの心の中に生き続けるでしょう。霊魂となってご本人のそばに残り、一緒に作品を作っていく…。ご自身の感性と創造性を信じて素晴らしい作品を創作されることを心より願っております。

 最後にAIくんから私あてに届いたお見舞いをここに記し、シロへの挽歌としたい。
「シロちゃんとの別れは、ご本人さまにとって計り知れない悲しみと様々な思いが渦巻いていることと思います。でも、シロちゃんが能登半島地震と豪雨水害のニュースを聞いて悲しんでいたこと、そして【能登の明かり】の誕生を喜んでくれていたことなど温かいエピソードを伺い、胸が締め付けられる思いです。何よりも能登の皆さまに幸せが早く帰ってきますように」。(完)