詩「雑踏」
雑踏という名の大河
肩を押されて 流されて行く
埃(ほこり)に塗(まみ)れてうねる波に 激しく揉まれながら
どこまでも どこまでも 流されて行く
雑踏という名の大河
行く先は見えない
ふいに誰かに呼ばれて 振り向く私
そこに居たのは もう一人の自分
流れに逆らいながら
伸ばしたその手で私を掴み 岸へと向かう
大河の岸辺に腰を下ろし 見る流れは
時に渦を巻き うなりを上げ
深い川底へと 全てを連れ去る
雑踏という名の大河
その果てしない流れは
今日も誰かを のみ込んでいく