詩「ある日の日記」「ある日の日記 パートⅡ」
ある日の日記
帰宅した夫に嬉しい報告
「今日ネ、お店の人にすっごく若く見られちゃったの。フフフ」
ルンルン気分の私に
「ふーん、そう」愛想も何も無いひとこと
然も顔はテレビに向いたまま
気まずい沈黙……。と、その時
「ヘーッ、ママすごいじゃない!」
背後から重い空気を割って入った娘のことば
「だって ママのこと若くてきれいな人ねって
みんな言ってるよ。ホントよ」
思わず口元が緩んだ私にすかさず第二の矢
「私ネ、あそこのお店で可愛いワンピ見付けた
の。きっと似合うと思うんだ。だってママの
娘だもん」
ムムッ! 敵はそう来たか
中学生になった娘
彼女は早くもリッパな〝オバさん予備軍〟である
ある日の日記 パートⅡ
マニキュアを塗りながら 夫との会話を思い
出していた
それは居間でテレビを観ていた時のこと
画面の中では数頭のライオンが獲物に襲い掛
かるシーン
弱肉強食の切ない自然界の摂理だ
その時 夫が私に言った
「あれは全部メスなんだよ、メスが狩りをする
んだ」
更に続けて
「俺もお前に狩られたんだよナ」
すぐさま私も反論
「私はあなたの毒牙に掛かったのよね」
少し濃いめのピンクにしたマニキュアは も
う乾いたようだ
両手の指をライオンのかぎ爪のように曲げて
顔の前にかざし
鏡に向かって〝ガオーッ〟と吼えてみた
そしてひとりで笑い転げた
ある日の午後