詩「きらい」

夜明けの雨音
見たくも聞きたくもない奴
ざわざわざわ
顔じゅうの穴に
鉛色の気体が入り込む
重くなった頭の中が動かない
手足だってさっぱり
何か
時間が長い長い貨物列車
乗っている
ざあざあと笑う声がかすかに聞こえる
ぼんやりとした眼で聞こえないふり
どうして笑うのですか
馬鹿にしているのですか
それともただ弄んでいるのですか
ならば
波紋を描く名曲集でも取り込みましょう
あなたには届かぬように

夕暮れ前に嘲り笑いが遠のいて
さあ
塞がれた穴に冷やりとした空気を通しましょう
黒い厚底靴で郊外へ
溜まり水に映る電柱が頭から突き刺さり
たけくらべを始めた土筆ん坊
アオサギが水路で長い足を自慢げに
際限もないおしゃべりの雀たち
聴き入る菜花の黄黄黄
心臓の鼓動も脈も嬉々として
手足の先まで血がかけめぐります
鼻から口からどっと入る冷気が
澱んだ肺を再生させます
蘇ったリズムが躍る踊る
この夕暮れ前にして緩む頬
冷たい笑顔ですって?
雨さん
あなたの行いは分からないでもありません
だから
憎いわけではないんですよ
きらいなだけなんです
あなたがお日さまをきらいなように
   
ああ夕焼けが