詩「寛容な水」
スライドガラスに一滴の水
顕微鏡で覗き込む
それは科学の緻密な手によれども
自然の美学は失われず
まるで微生物のコロニーのようで
生きている
その表面張力は
外界との確たる隔たりを持って
ナノレベルでも
崩れることはなく
振り子のように
自己完結した形を戻す
その世界は善なる力に満ち
透明度は光を許す寛容である
無限の衝突を繰り返すブラウン運動
それは不確定性のゆらぎと人は言う
無から有は生まれ
有は無へ帰する不思議
その内に存在する
ミクロ宇宙が集まって
水は整然として澄んでいる
実験してみよう
スライドガラスに
一滴のリポイド蛋白
水に口ができ
尾ができるか
生物の濃度勾配も水ではないか
生命の誕生も水ではないか
だからそっと水滴を動かしてみる
僕は知りたい
顕微鏡のなかにある水滴の
光で見る真実