詩「静かなみちで」 

夕暮れ前の散歩みち
まばらな人は音もなく
ふと
桜並木の合間から
向こう岸に目をやれば
同じ並木の合間では
ただ淡々と音もなく
続く車がひきも切らず

河は 
底の見えないこの河は
流れているのか いないのか
澱んだ水を溜め込んで
だんまり面に樹影を映す

石段を一歩また一歩
下りると水面で踊るもの
あっちへヒョイヒョイ
こっちへヒョイ
波紋を描くアメンボウ
音もたてずに
スイスイスイ

さあ
見とれていないで
岸から上がる
一段一歩忍び足
ゆっくりゆっくり
一段一歩

また
散歩みちをだるい足
見上げる空には夕焼け雲
小さな羊に大きな羊が
ただ
ぼんやりと浮いていて
何をどこを見ているのやら

右足一歩
左足一歩
すると
この行き亘った静けさに
幸せ感が胸に満ち
鼻から歌が湧いて出る 
これが人の望みの喜びか
 
でも
周りのすべては知らんふり
ならば
こちらも真似て知らんふり

ほぅら
こんなにも幸せさ