2012/10/31
☆前作〈十リットルの女〉に続く真伏ワールド 昭和二、三十年代の子どもたちはビー玉やショーヤ遊びに夢中だった。「少年時代」の思い出は、「熱砂」同人でギタリストでもある作者の真伏に限らず、誰にだってある。
物語は、そんな時代背景のなか、昭和への郷愁を呼び起こしながら始まる。こづかいを引ったくられたり、お菓子を食べられたり…、あげくに叩かれたり、蹴られたり。遊びまで強要され、頭の上がらなかったガキ大将。そのガキ大将に、主人公「孝平」がある事件をきっかけに目覚め〈黒いへび〉を手に入れ、敢然と立ち向かう話である。
当時の野や山、川が視界の向こう側から見えてくるような、そんな淡々とした視覚(色彩)表現が物語全体を引き締め、そのうえドキドキわくわくする展開だ。読み進めるうち、そこにはこどもたちだけの不思議な空間が広がっていることに気付かせられる。
そして。昭和の郷愁と作者・真伏の少年時代が浮かび上がり、時代の音までが聞こえてくる。皆さん! ぜひ、腕白時代にタイムスリップし〝真伏ワールド〟を十分にお楽しみください。