先日の例会でテーマエッセイ〈まわる〉につき合評会を行いましたので、結果をここにまとめて公表します。23回のテーマエッセイ=テーマは〈梅雨〉=と合わせ、22回分もあらためて読んでいただけましたら、幸いです。
【各作品につき】
・「女子高生の焼身自殺」(伊神) 顔を覚えてもらうこと。先輩の教えを守って努力する新聞社時代の姿が目に浮かぶようでした。その教えが今も生きているところが大変良かったです。・「残像」(山の杜) 懐かしい先生との思わぬ再会。亡くなられていたという情報を最後に持ってくるのは巧みだと思いました。・「回る回る 回転ずし」(眞鍋) 寿司屋の方のご厚意、スタッフの気遣いに感動しました。自分が初めて回転ずしを食べたときのことを思い出し、そして同時に祖母のことを思い出しました。認知症の祖母に私がお皿をとってあげた思い出があります・「駐在さん」(牧)私には「おまわりさん」が身近にいない存在だったので新鮮な気持ちで読みました。そういう人も多いと思う。特に若い人。私の中でのおまわりさんの歌と言えば「犬のおまわりさん」です。・「まわる」(平子)私には少し難しいですが。「生」に関する二人の違いが感じ取れた。男のほうは家族がいるためまだ死ねない。女の人は男の人と一緒に死にたい。どうにかなるさと思えるならまだ生きていける。そういうことなのかなと思いました。・「まわしまわる一日」(真伏)人は色々な「まわる」を日々、体感しているのだなと。素直に面白かったです。
【総括】
合評会は出席できなかった山の杜伊吹さんからの感想コメントを伊神さんが読み上げスタート。特に話が盛り上がったのが「回る回る 回転ずし」でした。なんと、あの回転ずしのレーンを開発した方と平子さんがお知り合いだったという、貴重なお話が聞けました。そして回転ずしのスタッフの皆さまの気遣いには、誰もが感激。それだけ厳しい世界なのだとの声も聞かれました。
「駐在さん」では、おまわりさんと警察官の名前にそれぞれ印象が違うという話に。警察というと少し怖いイメージがありますが、実際は優しいですよという作者の牧さん。そんな牧さんと伊神さんは「おばあちゃんをどこまでも大切にしたいという心が伝わってきたよ」と、私の「いつまでもまわる」に共感してくださったそうです。「まわる」は平子節。平子ワールドに引き込まれたなど。独特の世界に皆さん感心していました。「まわしまわる一日」は面白かったという感想が多かったです。「女子高生の焼身自殺」は駆け出し記者のフレッシュな気持ちが伝わってきました。駆け出し記者が努力している姿が目に浮かぶようでした。「残像」は、とても山の杜さんらしい作品だったと伊神さん。
初めてだけに手探りの合評会でしたが、なかなか実のあるものになったのではないでしょうか。私自身、すごく刺激を受けました。これを糧に、皆さんこれからも面白い作品を書いてくださることを期待しています。「『全体に熱砂ならでは、のあったかい作品が多かった』。ただ、書く以上はやはり今の世の中に巣食う悪をピリリ、と指摘する作品もほしかった」(伊神さん)の声も、ありました。 =以上。編集委員、黒宮涼