平子純が回想録「翻弄」第2弾〈ある名古屋の宿の物語〉を発表
新幹線開業により大量輸送が可能になり旅も変わり日本人の意識も変わっていった。
旅行会社は各々大きくなり修学旅行、団体旅行を激しく争奪合戦をし始めた。そうなると旅行業者は旅館を自分の意のままにしたいと考えそれぞれ協定旅館組合の組織を競って作った。各地域に支部を結成し全国総会は春に行うようになった。(原文通り)
ウエブ文学同人誌「熱砂」同人、平子純の回想録「翻弄 第一章名古屋駅裏編」に続く「翻弄 ある名古屋の宿の物語 第二章成長編」はこんな書き出しで始まります。作中に登場する主人公一夫は、平子の実の父で平子自身(作中の政志)も幼少期から、そんな父の苦闘の背中を間近に見て育ってきました。それだけに、宿を取り巻く厳しくも、かつ優しく温かい人間模様が繰り成す栄枯盛衰のドラマは、まさに家族が共に泣き、笑いながら歩んだ忘れ得ぬ〈道なき道〉であると同時に、名古屋の旅館業界の歴史そのものだともいえます。
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脳梗塞に言語障害、不自由な足という三重苦のなか、家族や友人らの声援もあって、平子さんは今再び果敢に立ち上がっています。前途を照らす、その渾身の作「翻弄」の第2章成長編をぜひ、読んでいただけたら、と思います。どうか、ナゴヤの街に〈一輪の花〉を咲かせ続ける、傷だらけの実録証言にご期待ください。(ウエブ文学同人誌「熱砂」主宰、伊神権太)
※「翻弄」は引き続き、繁栄編、挫折編、理想を求めて(仮)の順でつづきます。
「熱砂」21回目のテーマエッセイ=テーマは〈嵐〉=が、晴れて全作公開
〈音楽と私〉〈酒〉〈雨〉〈色〉〈時〉〈夜明け〉〈◯◯にて〉〈贈り物〉〈便り〉〈走る〉〈声〉〈巡る〉〈泣く〉〈東京五輪〉〈あの人〉……と続いてきたテーマエッセイも今回が21回目。テーマは20代の若手ホープ、黒宮涼提唱による〈嵐〉です。皆さん、ぜひとも読んでください。読んでいただけましたら、とても嬉しく思います。
11月18日には、平子純の〈嵐〉も公開され、これで「熱砂」の全員が集合。全作が出そろいました。公開されたテーマエッセイは、次のとおりです。
「嵐の日」/黒宮涼、「灼熱収容所」/山の杜伊吹、「あらしの記憶」/真伏善人、「恐ろしい嵐の思い出」/眞鍋京子、「あゝ 人生とは」/伊神権太、「嵐」/牧すすむ、「嵐」/平子純
❤脱原発社会をめざした文学『OFF 言葉と想像力によって 第1号』が誕生 伊神権太も小説〈海に向かいて、―瞬(まばた)き〉を発表❤
日本の文壇に登場した『OFF 言葉と想像力によって 第1号』。巻頭の1頁には【『脱原発社会をめざす文学者の会』は、文学によって、新しい社会を構想し、その実現に取り組みます。ここに小さな旗を立てました。】のことばが添えられた。
ノーモア広島、長崎、福島――を合言葉に原発事故の被災地・福島を訪ねるなど幅広い行動を続ける日本の〈脱原発社会をめざす文学者の会・編〉による『OFF 言葉と想像力によって 第1号』(発行人・加賀乙彦、編集人・村上政彦、住所・東京都三鷹市、山本源一方)が9月3日、長野県の軽井沢朗読館で開催された会員による〈鎮魂の原爆文学を読む会〉の席で公開された(1冊1000円)。
執筆陣と作品は、次のとおり。
詩〈はるかからの波〉〈二〇一六年の春に〉〈いちばんの味方は事故〉若松丈太郎、エッセー〈脱原発通信 君はゴジラを見たか?〉〈飯舘村は何を失ったのか〉川村湊、小説〈星の子供たち〉森千春、詩〈天井譚〉森川雅美、小説〈アトムの子供〉村上政彦、小説〈海に向かいて、―瞬き〉伊神権太、エッセー〈二つの爆発から思えたこと〉橘光顕
なお、ウエブ文学同人誌「熱砂」主宰でもある作家、伊神権太の小説〈海に向かいて、―瞬き〉は、「熱砂」の伊神権太作品集のなかでも7日から公開を始めています。ぜひ、読んでください。
牧すすむの詩「~夢~」を公開
詩人牧すすむが前回の「階段」に続き、こんどは「~夢~」の発表です。多くの夢が花開いたリオデジャネイロ五輪。その陰には、さまざまな泣き笑いのドラマがありました。そして。4年後のトウキョウをめざし人びとの〈夢〉は、また歩き始めます。苦しかった少年時代に自分の膝に【夢】という字をなぞったという牧さん。夢とは、果てしなく、限りない道のような気がします。さあ、みなさん! この詩を読んで、指文字をなぞって新たな夢に向かって。出発しましょう。
黒宮涼の連作短編小説〈玉木さんと鈴木くん その2『再会』〉その3『姉妹』に続き、その4『進路』(最終章)を公開
ウエブ文学同人誌「熱砂」の若手、黒宮涼の連作短編小説その1、その2、その3、その4を公開中です=7月29日、その1『友だち』から公開開始=。満を持しての意欲作です。ぜひ読んでください。かつて〈うそ〉という歌謡曲が大ヒットしたことがありますが黒宮涼の小説世界は、多感な少女のころには〈嘘〉にもその底に揺れ動く本物の心が流れていることをつくづく感じさせます。作者ならでは、の透明感あふれる純粋な青春小説といっていいのかも知れません。
皆さん。ご自身の若き日々はどうでしたか。重ね合わせて思い出してください。友だちのこと、初恋のこと、うその本音。「青春の門」に立ちふさがる得体のしれない物の怪たち。ご自身の歩いた道を回想しながら物語の世界を堪能していただけたら、このうえない幸せです。〈うそ〉が飛び火し、ホンモノの友情を生む。そんな、どこにもありがちな大展開を願いつつ……(ウエブ文学同人誌「熱砂」主宰、伊神権太記)。
以下は、連載開始にあたっての黒宮涼のことばです。
【黒宮涼】「嘘をついて後悔してしまったことがあります。子どもの頃のほんの些細な嘘。大人になった今でも取り返しがつきません。皆さんはそんな経験ありませんか。嘘にはカタチがあります。誰かのためだったり、自分のためだったり。時には傷つくこともあるかもしれません。そんな様々な嘘の物語です。どうか最後までお楽しみください。」
※〈その4〉は8月19日に公開しました。〈うそもほんと〉。純真そのものの青春群像。その1つの着地ともいっていい、終着駅をぞんぶんに、お楽しみください。こんごとも、黒宮の力作の数々にご期待ください。