詩二編/「回帰への再生」、「なくて いい」

  詩「回帰への再生」

 延々と悠久の時は流れゆき
 いつしか恒常文明は破綻していた

 人は自ら破壊者としての役割を終え
 やがてあらたな生命に再生する

 人知人力を超えた高次なる存在
 限りない宇宙の絶対者に帰属する

 世界から光は失われ
 生物は視覚を奪われる
 暗黒が世界を支配する
 
 沈黙が訪れ聴覚は消えて
 閉鎖した内部世界が生まれ
 孤独の思考が始まる

 自己保存本能は委ねられ
 呼吸は沈み鼓動は遠くなり
 世界への警戒は失せる

 口は固く養分も無用に
 細胞はしだいに停止し
 生命体は気化していく

 永遠なる自己は闇に蝕手を伸ばし
 ひろがる宇宙塊となる

  詩「なくて いい」

 なにも ない
 なにも ない

 なにも ないから
 ぼんやり している

 それでね
 あきれる くらい
 あたまの なかは
 からっぽ だ

 いつの まなか
 だらしなく
 おくちが ぽかん と
 ひらいている

 なにも ない
 なにも ない

 なにも ないって
 とっても らくで
 しあわせ なのかな

 なにも ないって
 ぜいたく なのかな

 それで いいと
 こころを きめれば
 なにも ない まいにちに
 きっと なにか あるんだね