詩ストーリー「雨の花」
船に乗った横浜波止場/厦門を超えシンガポール、プーケット、コロンボ、エジプト…
/地中海のミコノス、ピレウス、シチリアから/リスボンへと見えない誰かに連れられ/やってきた
ビルボア、ル・アーブル、ティルベリー、ヨーテボリ。/スペインとフランス、イギリス…/ノルウェーにたどり着いたところで/オスロで放たれ、この町の異人さんに
この50日間/私はいま この町で/きょうも海かぜと朝の光、波の音で顔を洗う/気がつけば、ここは“海の牢獄”/帰りたい。でも、帰れない/帰られるのは、船室だけ
それでも/あの人は本物の海を見てこい、という/空も、風も、雲も、彼女さえもが何も教えてくれはしない/一人だけ取り残され、ため息をつく
一体全体何の知らせだったのだろう/オスロで突然、空から雨が降ってきた/白い綿帽子のような妖精たち/雨のひとひらひとひらが、ふんわりふんわりと/魂とともに地上に落下傘部隊のように落ちてきた
よく見ると、そのひとひらのなかに日本に住むWさん、Mさん、Kさん、Hさんら/みんなの顔が映し出され、浮かびあがっていた
ボクはあなたの言う/ほんたふの海を、まだ知らない/102日間 地球一周の船旅はまだまだ続く
2012年6月28日
ノルウェー、フィヨルド遊覧船上にて・権太